ワールド・レポート その6

フィリピン新政権ドテルテ大統領“ダバオを成功モデルに”

フィリピンは、ここ数年実質GDP成長率6%前後の高成長を続ける。
昨年6月末に新大統領に就任したドテルテ大統領は、ミンダナオ島の中心都市ダバオ市で1998年から2016年にかけて22年間、市長を務めていた(一時期は、他の要職に勤務していた期間あり)犯罪や汚職撲滅を強力に推進し、実際にダバオ市とその周辺は、フィリピンでも比較的安全とされている。
ドテルテ大統領は、初のミンダナオ島出身の大統領であるため、やはり地元の期待は特に強い。
フィリピンとミンダナオ島ダバオの経済はどこまで成長するのか。今回は、フィリピンの今最も注目の都市ダバオについて報告します。

農業地から産業の街へ

“これからは、帝国マニラから帝国ダバオの時代だ”地元民がドテルテ大統領に期待を寄せて、このようなコメントが街に溢れている。大統領府がある経済発展の著しい北部ルソン島に対し、農業主体の一地方である南部ミンダナオ島には、常にマニラから見下されて来たという思いが強い。ドテルテ大統領は、治安維持しながら、この農地を産業都市に変えてきた自負がある。今後はさらに、インフラ整備をしながらこのダバオからフィリピンを変えていきたいと考えているようである。

農業鉱業のミンダナオから、ITなどの新産業も拡大

フィリピンの第一都市は北のマニラ、第二に中央のセブ
そして、南のダバオが第三都市とされている。
産業別にミンダナオの成長率は、鉱業や林業、漁業、採掘業のGDP成長率が突出している。銅やクロム、金の産出地であり、世界からも注目されている。また輸送業や、自動車、日用品の産業も伸び率がよい。ドテルテ大統領は、今後は、建築業や、サービス業、ITに成長余地があると見込みを立てているようだ。ミンダナオ主局は、耕作地の大規模集約化を進めて、住宅・発電・通信・インフラに土地を転用しようとしている。
また海外企業誘致目的の経済特区を更に設けることも計画中。(現在の経済特区は、ミンダナオ島では7か所)地元経済界では、“ここ数年でマニラに次いで、第二のITの波がダバオにやってきた”との喜びの声が上がっている。フィリピンは、豊富な労働力を売りに ITの一括受託やIT集積地等のIT産業の進出の優遇措置を宣伝してきた。IT産業の拡大は、さらなるダバオ経済の発展の源になりそうである。ダバオは、15歳以上の人口の増加も、近年は国の平均よりも28%増加しており、
(フィリピン全体の同期間の15歳以上の人口増加率は21%)を上回るテンポで拡大している。

日本人が支えるダバオ経済と教育

ダバオは第二次大戦以前から、日本人との深い繋がりも持っている。
戦前は、2万人のという日本人がアバカという麻の製造をダバオで運営していたことから、ダバオは、東南アジア最大の日系人街を形成した背景もある。日本人は、その後もダバオで地元経済に一定の存在感を保っている。その一つが、ダバオの日本人会が運営している教育機関である。
ここには、幼稚園から大学まで、常に2000人の学生が登録、日本語教育を受けている。またこの度の、フィリピンの教育制度の見直しに合わせて、ミンダナオ国際大学が創立された。この学校には、新たにシニアハイスクールも増設された。フィリピンの新しい教育改革(K to 12)に伴い、従来の6年・4年学制から、日本の高2と高3学年が導入になった。二学年増えて18歳で大学進学という世界標準に合わせての12年学制と改革されている。
このシニアハイスクールを設けるにあたり、ミンダナオ国際大学の学長のイネス氏は、“日本語と日本文化を学ぶ学生には、国際的感覚を身に付ける人材となり、専門学校や大学に進学をしてもらいたい。十分な学力と自信を持って、日本やフィリピンの日系企業に就職をしてもらいたい。そのために日本語や特に日本語の挨拶マナーを習得できる環境を提供したい考えでいます”と語っている。

この先も、フィリピンと日本のより良い関係構築のために、フィリピンの活気のある
ミンダナオ島ダバオからは、目が離せない。