トランプ大統領令、乱暴で認められないが、難しい問題でもある
トランプ大統領が選挙公約とも関わって、難民などの入国に関して特定の国々の人々の入国を厳正な審査体制ができるまで一時的に禁止するという措置を取った。
これに対してアメリカ国内からだけではなく、日本のマスコミを含めて世界の各地から反対・抗議の声があがった。アメリカでは「憲法違反」として「大統領令」の執行停止を求める仮処分申請が認められ再び入国が認められた。
トランプ氏が大統領選挙においてアメリカの製造業の衰退と、そこで働いていた白人労働者の窮状を打開するために「外国」と移民に矛先を向けた攻撃を行い、支持を広げた。
アメリカの製造業の困難は多国籍企業化し、安い賃金を求めてメキシコや中国に製造拠点を移したこと、それに伴い従来の白人労働者の職場・仕事が失われたこと。アメリカの製造業が利益の高い軍事産業にシフトし既存の製造業の国内的発展が放置されてきたことであり。これらにメスを入れて対策をうたない限り、発展的解決にならないことは明瞭である。にもかかわらず選挙においてはトランプ氏の短絡的デマが通用し当選した。
当選したトランプ大統領は大統領令によって公約の実現に動き出した。しかしそのやり方は7か国の国民すべてを対象として入国させないなど、あまりにも乱暴であっために批判と抗議を受けた。しかしアメリカ国内における世論は、今回のトランプ大統領の措置を支持する声と反対する声は二分している。
やり方や手続きに問題があることは明瞭である。私は、このようなやり方がテロの解決に寄与するどころが、増大させる危険があると考えている。しかし問題は、難民受け入れ、さらに移民受け入れを、従来通りのやり方で行い続けるのかということである。この問題はアメリカだけではなくヨーロッパにおいても大きな問題となっており、先のイギリスの「EU離脱か継続か」の判断にあたっても大きな争点となった。
トランプ大統領のやり方を批判している日本のマスコミも「進歩知識人」と言われる人々も、日本の難民受け入れ、移民政策に対してどういう態度をとるのかという問題についてもきちんと言及する責任がある。そうでないとトランプ大統領批判は、やり方や手続き問題に終始してしまう。本質はアメリカと言う国の在り方が問われている問題である仮処分ではなく本裁判で大統領の言い分が認められたら日本のマスコミや進歩的知識人はどうするのか。
アメリカでは「違法移民」は1000万人を優に超えており、それがさらに急速に増えようとしている。日本の人口で言えば500万人を超えていることになる。日本においてシリアからの難民申請が認められているのは3名で、人道上からの長期滞在措置が取られている人を含めても30名余りである。日本国ならびに日本人、そして日本の進歩勢力と言われる人々も、この根本的問題について、きちんと考え、責任をもつて言動することが迫られている。