中国の外貨準備高をどう見るべきか
新年あけたら、日本のメディアを含めて世界のメディアは中国の外貨準備高が3兆ドル割れ目前になったことを一斉報道した。このニューズの着眼点は中国の外貨準備高が過去最大を記録した2014年6月末と比べて約4分の3に縮小したことにあり、中国景気の先行きの不透明感を匂わせている。果たしてそのように見るべきだろうか。
昨年の1月、あるミティンーグの場で、只今から中国人民銀行は中国から対外投資・融資に関する海外送金をすべてストップしたという生の通知を受け取ったことがあった。相変わらず荒っぽい手法だなと感じたが、市場もそれなりの粗っぽさがあった。上海自由貿易区の金融政策を利用して、その自由貿易区中にある銀行口座からあけっぱなしの蛇口から水が止まらなく流れるようにたくさんの外貨が海外に送られた。その規模があまり大きいので、人民銀行も驚き、急ブレーキを踏んだというわけだ。
つまり、中国の金融政策により、外資企業が中国で取引で儲けだ分をすんなり本国に送金することができない、やむを得ず中国国内で貯めこんでいる。でも可能であればその分を本国に送金したいなので、この手あの手を使って本国送金をしているようだ。言い換えれば、自由な金融政策であれば、中国の外貨準備高もそこまで膨らむことでなく済むだろう。
そして、もう一つ、中国の企業は政府による企業の海外進出奨励政策を利用して積極的に海外投資を行っており、2016年、中国企業による海外M&A総額は1600億元に上って、一昨年よりほぼ倍増している。それらの投資はもちろん中国の持っている外貨を使ったが、中国経済に不利益をもたらすわけではない。
従って、昨年では中国の外貨準備高が急速に減ったことでリーマンショック以上の危機をもたらすと煽る人がいたが、残念ながらそのようなことが至らなかった。
そもそも、外貨準備高には適正水準という概念があり、外貨準備高が増えれば増えるほど良いとは言えない。実は日本の外貨準備高は急激に増えたのはバブル経済が崩壊されたあとのことで、外貨準備高の増えることが必ず経済の成長を意味するわけではない。中国では2011年から外貨準備高が3兆ドルを超えている、それは適正水準であるかどうか評価が割れている。日本の外貨準備高はGDPの25%前後であるが、中国の外貨準備高はGDPの30%を超えている。早くも日本の外貨準備高が過剰な水準であることを指摘されているので、中国の外貨準備高も適正水準であることをいえないだろう。しかも、今の中国の外貨準備高が半分減っても、世界一の規模を維持できることもある。
加えて、外貨の運用もとても難しい。米国債として保有している分については、アメリカの金融政策で価格が下落する危険をはらんでいる。アメリカの金融商品を投資しも大きなリスクを背負っている。最も、経験的、技術的な制約の上て、日本では考えられない人的な問題で、中国の金融政策、外貨運営などに関して、他国の経験値で評価しないほうがいいだろう。
しかし、中国景気の先行き不透明さを煽ることは国際投機筋にとって必要不可欠なことである。彼らは中国の景気減速や資本流出に伴う元の下落を見越して元売りを仕掛けた。あらかじめ元の空売りをして、元安が進んだ時点で買い戻して差益を上げるのが狙いだ。実は2013年末から、アベノミクスを乗じて、投機筋は予め円安を売り、円は見事に大幅下落したところで買い戻して甚だしく儲けた。投機筋は中国でも同じことを仕掛けており、同じ道を辿り着くことを熱望している。日本では中国経済が必ず崩壊すると観ている人だちも国際投機筋と唱和して、中国経済の衰退情報をまき散らしている。
でも、新年あけたら、中国当局が投機筋の封じ込めに動き出して、人民元の対ドル相場が急上昇した。そのため、元安を仕掛けた投機筋は大きな損失が出たそうだ。投機筋は商売上でそのようなリスクを負うことがやむを得ないが、日本はそこまで投機筋と付き合っていく必要がないだろう。
金融政策は経済に大きな影響をもたらすが、それを基準に一国の経済を評価すること相応しくない。とりわけ金融政策の運営が成熟していない国ではなおさら要注意だ。中国の外貨準備高の増減に気を取られるよりは中国の実経済のほうに注目すべきだろう。そこではより真実な中国経済を理解する手係がたくさんある。次回は「アリババは中国の製造業を滅ぼすか」というテーマで、インターネット経済が中国経済にもたらす影響を探ってみたい。