ベトナム政府の発表によると障害者が約600万人(内300万人は枯葉剤被害による障害者と推定されている)いるが、職業訓練を受けた者は数%とみられ、それも原因の一つとして障害者の未就労者は3割近く居り、本人はもとよりその家族も貧困にあえいでいる。ベトナム政府としては、この問題を重視し政府の方針として枯葉剤被害者協会を立ち上げ、その実態調査を進めると共に、障害度合いの認定を行い一定の人々に対して給付金の支給を行っている。その中で重要な課題として障害者に対して職業教育を行い自立を援助することが浮上している。本会の会員の多数は長年にわたってベトナムにおける障害者教育の立ち上げに携わり、一定の貢献をしてきた。その中で2017年3月、ベトナムにおける枯葉剤被害者への医療に大きな貢献をしてきたファン博士とタン医師が来日された。両名はいいずれも枯葉剤被害者として世界的に有名な双子の結合児であつたベト・ドク兄弟の主治医を務めて来た医師である。両名の参加の下、3月26日、京都において医師などの医療従事者を中心に)枯葉剤被害問題のシンポジウムを開催した(60数名の参加)。その中で両名から、ホーチン市の郊外に枯葉剤被害者を中心に障害者を対象とした医療・リハビリテーション、職業教育、療育の総合施設の建設計画が明らかにされ日本からの協力が訴えられた。
シンポジウム後、両名と藤本文朗(ベトちゃんドクちゃんの発達を願う会代表として40年に渡ってベトナムの障害者の支援を取り組んできた滋賀大学名誉教授)と尾崎望医師(看護師、理学療法士などとともにタイニン省に入り16年に渡って治療・リハビリテーションに携わって来た)、鈴木元(本会理事長で、2003年から2013年に渡ってベトナム教育訓練省に協力しJICAの支援も受け障害児教育担当教員養成講座にかかわって来た)の3名が相談し、ラ日本側としてオレンジ村構想の中の重要課題である障害者に対する職業教育分野の立ち上げに協力することにした。
ベトナムではベトナム戦争中にアメリカ軍によって散布された、ダイオキシン入りの枯葉剤被害者が今なお300万人いる。その1/3の100万人におよぶ人々が不就労で介護している家族とともに貧困にあえいでいる。そこでベトナム枯葉剤被害者協会は政府の支援も受け、ハノイ(北部)、ダナン(中部)、ホーチミン(南部)に被害者のために治療、リハビリ、職業訓練、療育を行う総合施設を建設する計画を立て、ハノイに関しては昨年完成した。続いてホーチミンでの総合医施設(オレンジ村)建設が課題となっている。
ベトナムの障害者問題に長くかかわってきた私たちは昨年11月にオレンジ村支援日本委員会を立ち上げ、私が事務局長に就任した。そして5月27日から昨日6月2日まで、ベトちゃんドクちゃんの主治医であつたフォン博士等の枯葉剤協会幹部3名を日本に招待し、よさのうみ福祉会の共同作業所や立命館大学の障害者雇用組織、オムロンの障害者福祉工場、兵庫県立リハビリテーション中央病院などを案内し障害者への職業訓練による自立を図る経験を学んでもらった。障害者は保護される者、忌避される者という考えを改め、残存能力を生かし社会参加し、働き、自立への道を歩むという姿を見てもらい感動され、ベトナムでの具体化を諮られる決意の下、帰国された。
同時に大阪、京都、神戸において枯葉剤問題シンポジウムを開催し、ベトナムにおける枯葉剤被害の実態を生々しく報告してもらった。参加者の大半が「ベトちゃん、ドクちゃんの段階の認識で止まっていた。いまなお300万人に及ぶ被害者が苦しんでいることを知って衝撃を受けた」「侵略した側のアメリカ兵で枯葉剤被害を受けた兵士達は政府から支援を受けているのに、侵略されたベトナムの兵士への、支援を拒否しているのは、あまりにも理不尽だ」との感想が寄せられ、シンポジウム会場で30万円を越える支援金が寄せられた。
今後、引き続きカンパ活動を進めるとともに、外務省やJICAなどに職業訓練やリハビリのノウハウ支援の要請の取り組みを進める。